AS I WANT

様々なことを "As I Want" (私の好きなように) 考えるブログ。

4月は就活の季節 (良い仕事の探し方)

このエントリーは4,576文字で、約7分で読めます。

f:id:As-I-Want:20190419150231j:plain 

「いや、4月じゃ遅いだろ」

 

と思った方も多いと思いますが、現実の国内の企業活動では、一応4月になると新卒採用に対する業務が最盛期を迎えます。

 私自身は、とある民間企業で海外営業職をしていますが、会社自体がそれほど大きくないので、日本の本社に在勤している間は人事的な業務の支援もしています。今日はその経験を踏まえの小話を。

 

 

2020年新卒向けの就職活動の現状

建前としての経団連のルールでは、2020年新卒向けの説明会などの就活解禁は3月開始、直接採用に関わる選考試験や面接は6月開始、となっていますが、そんなルールを守っている会社は「新卒狩りレース」から脱落してしまうので、このルールは形骸化しています。

インターン会社説明会、OB/OG訪問など、大学3年生の5月から採用活動を始めている大企業は多く、4月に新卒が入社したら、すぐに翌年の採用活動が始まります。大手企業は一年中採用活動を行っているのです。

そのため、大学3年生のうちに内々定が出るというケースも少なくなく、大学4年生になってから就活を初めても遅い、と言われます。

しかし、早い段階からの就活準備は多くの会社にとって結構な負担です。

通年で採用活動を行い、専任の就職活動担当者を配置できる大企業はいいとして、通常業務の片手間で採用業務を行わなければならない中規模以下の企業は、大手就活サイトへの出稿と説明会の準備などがせいぜいで、4月までに内々定を出せるほどの準備が整っていないケースがほとんどです。

 

就職先は大企業ばかりではありません。

日本国内では、大企業と呼ばれる会社は約1万社。一方の中小企業は約380万社もあります。日本の生産活動を行う企業体の99%以上は中小企業なのです。

従業員数で見ても、大企業の約1,400万人に対し中小企業は約3,400万人で、国内の民間就業者の7割は中小企業に所属していることになります。

 

日本の就職活動は、上記のような春の就職活動が中心だと認識されていますが、これは大手企業を筆頭とする4月内々定をターゲットにした「先食い」スケジュールです。

就活性にとっても、ゴールデンウィーク前に内々定を獲得できれば勝組、と考えている人も多いでしょう。

しかし、実はわずか1%以下の大企業を中心としたスケジュールであり、残り99%以上の中小企業の多くは、4月からは採用活動が本格化します。

 

中小企業の採用活動

中小企業の多くは、大企業の採用から漏れた就活生を手ぐすねを引いて待っているのです。

中小企業は、持ち得る採用力や採用コストは大企業には及びません。最初から大企業と同じ土俵で就活戦争を戦うのは困難ですが、しかしできるだけ優秀な学生を採用したい。いくら優秀な学生であっても、そのすべてが希望する大企業に採用されることはあり得ないので、大企業の就活戦線から離脱した優秀な学生の採用が中心になります。

実際には、こうした中小企業の採用スケジュールにも段階があり、中小企業の中でも採用力のある企業から順番に採用枠を埋めていくことになり、採用力の弱い小規模企業は年度の最後まで採用枠が埋まらず、募集をしているのに新年度に新卒採用者がゼロ、というところもかなりあります。

 

多くの新卒就活生にとって、大企業に勤務することは夢であり目標でしょう。

大企業に就職できれば、平均以上の収入と社会的地位が得られ、ダイナミックな仕事をする機会も得られるかもしれませんし、何より将来に渡って比較的安定した生活基盤を手に入れることができます。

しかし、大企業には大企業のデメリットもあります。

大企業の場合、職種にもよりますが、取り扱う業務分野が多岐に渡り、会社組織の裾野も広いため、専門職、研究職、事務職でない限り、国内外の転勤や部署間の異動は避けられません。つまるところ、やりたいと思っていた仕事ができるかどうかは分からないというリスクが常に付きまといます。

高い収入を得るためにはそれだけの責務も課せられ、仕事の環境としてはかなりハードな面があります。大企業の巨大ピラミッドの中で成長、出世していくためには、他者に負けない不断の努力が必要になります。

 

一方の中小企業の場合、収入面では大企業に劣るケースが多く、会社基盤の安定性の面でも大企業ほどの安心感はありません。しかし、絶対安泰と思われていた大企業が破綻するケースがある一方で、数百年に渡り事業を継続している中小企業も多くあり、こればかりは会社規模の大小だけでは判断できません。

しかし、ある分野においては大企業より秀でたノウハウを持つ中小企業は多く、大企業の事業を中小企業が支えている、ということもよくある話です。会社の規模は小さくても、大企業と対等に渡り歩く中小企業もありますし、逆に大企業が頭を下げて仕事の依頼に来る会社もあります。

何か特別にやりたい仕事があるのであれば、最初からこうした中小企業に狙いを定めて就職活動を行う、というのも、決して間違った選択ではありません。

 

なんでこんな話をするかというと・・・

私自身は、現在社員数200人ほどの中小企業で働いていますが、ある分野においては日本唯一の企業です。

新卒で就職活動をしていた10数年前、とある大手商社と、とある政府系機関の内定をお断りし、現在の勤務先に就職しました。

会社の規模は小さく、社風も一昔前のような渋いところですが、働き甲斐があり、何よりも就業環境が程よくゆるくて快適なので、最近は事あるごとに若い方々に中小企業への就職の良さを説明しています。

  • カレンダー通りの完全週休二日 (土日祝はオフィス閉鎖)
  • 有給取り放題 (休暇理由不要)
  • 勤務時間自由のフレックス制度
  • 原則残業なし (残業代は15分単位切り上げで全額支給)
  • 30代で年収700万円、40代で1,000万円可能
  • 原則年功序列の自動昇進 (優秀者は特別出世コースあり)
  • ノルマなし
  • 意味のない会議は少しだけ

 

世の中にはこんな緩くて厚遇を受けられる会社もあるのです。

 

もちろん、中小企業であれば会社の組織力が脆弱で、ワンマン経営といったところも多く、セクハラ・パワハラ、過重労働、残業代未払いなどのリスクもあります。恐らく、「ブラック企業」と言われる会社の多くは中小企業です。中小企業の中でも、いかに「ホワイト企業」を見つけ、働きやすい環境を手に入れるかは、学生の目線では見極めは難しいかもしれません。

そこで、「中小企業の見分け方」をご紹介したいと思います。

 

働きやすい中小企業の見分け方

以下は、私の個人的な経験と情報網から得た考えなので、万能な判断基準ではありませんが、参考程度に見ていただければと思います。

  • 創業から少なくとも35年以上経過している (バブル崩壊を乗り越えている)
  • 社員の平均年齢が40代後半~50代で高め (平均勤続年数が15年以上)
  • 若い社員が相対的に少ない (同世代の競争が少なく将来出世の見込みが高い、あと上司から可愛がられるよ)
  • 採用実績の出身大学に、地方国立がところが多い (そこそこ優秀な人が多い)
  • 採用担当者や従業員がギラギラしていない (ギラギラはパワハラ)
  • スーツかクールビズが原則 (私服は面倒)
  • 女性が多い (男だけだとむさ苦しい)
  • 体ではなく頭を使う会社 (これ重要)
  • その業界をネット検索で調べると、検索結果の上位に出てくる

大体こんなところでしょうか。

有給が取れること、早出出勤やサービス残業がないことは言うまでもありません。

 

最近世代の仕事の流儀

どんな仕事でも楽なものはありませんが、わざわざ苦労を押し付けてくるような会社はいただけません。「苦労は買ってでもしろ」とか意味不明です。そういう人は今まで苦労や挫折を経験して成長してきたのかもしれませんが、今やネットで何でも調べられる時代。生まれた時からネット環境のあったデジタルネイティブの若者は、如何に苦労や挫折をしないか、リスクをヘッジする能力に長けています。

最近の若者は感情がないとよく言われますが、内なる感情は誰もが持っているはずですが、それを露出すれば共感ではなく反感を生み出す可能性を無意識のうちに警戒している部分があると思います。これが良いか悪いかは別として、他者との関係で起こり得るリスクを避けて生活している若者世代が多いのは確かです。こうした若者から見ると、どう考えても感情論でしかない根性主義は憎悪の対象です。

 

頭脳を使わず体力だけで勝負する仕事環境だと、売り上げを伸ばすためにはどうしても残業が多くなります。これは必然です。足で稼ぐ営業は労働力と売り上げがリンクしており、時間あたりの労働力で得られる売り上げは限界があるため、売り上げ向上のためにどうしても労働時間を長くしないといけません。

当然こうした仕事は社会において不可欠です。例えば介護や工事作業員などの作業職は「時間=労働価値」なので、これは働き手の体力への依存度が高いです。社会を維持するためには、体力資本の仕事はとても重要です。

例えば工事現場で建設作業員ができる時間当たり仕事量は決まっています。サボっていては工事は進みませんが、1人当たりの限界労働力以上の努力したからと言って、建物が早く立ち上がるわけではありません。早く工事を完成させるためには、1日8時間労働を延長しないといけません。だからこそ、仕事の資本である体力を維持向上するため、労働時間の制限や、時間労働に対する対価は必要になります。

しかし、オフィスに勤務する会社員が、現場の作業員と同じ「時間労働力」で仕事をすることはあまりに非効率です。時間当たりの売り上げを向上するためにはどうしたらいいか、例えばネットを使う、AIを使う、広告を使う、といったように、頭を使って仕事をすることを意識しないと、残業は減りませんし、脳みそまで筋肉の上司の圧力からは逃れられません。

会社が、こうした働き方の仕組みを理解し「頭を使って仕事をする」ことを重要視しているかどうかは、中小企業を見分ける際に非常に大きなポイントになります。

終業後に仕事がなくても上司より先に帰ってはいけないとか、だれよりも早く出勤しろとか、社員を時間で拘束することに価値を見出す職場は、頭ではなく体を使って仕事をするコンセプトが根付いているので、要注意です (それで拘束しているにも関わらず残業代を出さない会社は論外です)。

 

良い職場と巡り合うために

大学を卒業して入社する会社は、もしかしたら定年まで勤めあげる人生の舞台になるかもしれませんし、ハズレくじを引いて心身ともに消耗する地獄かもしれません。こればかりは、個人の個性と仕事環境の相性なので、絶対に正しいというルートはありません。

しかし、働きやすい職場というのはこの世に間違いなく存在します。しかもその環境というのは、全体の99%を占める中小企業の中に数多く存在します。

全員一斉で同じスタートラインから大企業ばかりを追いかけるのではなく、最初から中小企業を狙って「中の上」を先にいただくというのも、一つも就活のやり方だと思います。

「上」ばかり狙っていて、気づいた時には「中の下」あるいはそれ以下の選択肢しか残っていなかった、なんてことにならないように、お気をつけてください。