AS I WANT

様々なことを "As I Want" (私の好きなように) 考えるブログ。

海外で働きたい人たちへ

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日本では大型連休も終わり、そろそろ連休の疲れも抜けて通常運転モードに戻ってきた頃だろうか。ネットニュースでもいろいろなネタが投下されているが、やはり「10連休は長すぎた」という意見が多いようである。

私は、現在は日本の勤務先がベースだが、月の4分の3は海外出張のため、日本のカレンダーはほとんど意味がない。海外では土日が休みではない国も少なくないので、曜日感覚がほぼない。その代わり、帰国している間に日本の祝休日部分の振替休暇を取得できるので、連休のピークを避けて連続休暇を楽しむことができる。

今回のスーパーゴールデンウィークも、後日帰国したら代休を取得して10連休をいただく予定である。オフピークの連休では人混みもなく、移動費用も安いので、その点では非常に助かっている。

「全員が一斉に10連休を取得するのではなく、少しずつシフトしてピークを分散させればいいのに」という意見がよく挙がるが、子供たちの学校を不定期に休ませることは難しいので、家族全員が同じタイミングで休日を楽しむためには、特に子育て世帯では一斉休暇とせざるを得ないだろう。これは難しい問題である。

さて、インドでの仕事は昨日で終わり、この週末を利用してこれからシンガポール経由でベトナムへ移動である。私の勤務先のルールでは、移動に6時間以上を要した場合はそれも勤務扱いとなるため、インドからベトナムへ移動となる今日日曜日も、帰国後に代休か振替を取得できる。これは非常にありがたい制度だ。

今日は、海外で働きたい、国際的な仕事をしたいと思っている方々へ、どうしたらそのような仕事に巡り合えるか、その一端をご紹介したいと思う。

私が海外で仕事をするようになった経緯 

私は現在海外を飛び回る営業職であるが、現在までずっと海外営業職をしてきたわけではない。地方の無名三流大学を卒業した後、新卒入社した職場で2年勤務し、その後転職して2度目の職場に3年勤務した (そのあたりの経緯はまた別の機会に)。

20代も後半になり、それまで勤務した2つの職場は海外出張もあったが業務としては至極ドメスティックなものであった。30歳が目前となった頃、自分のやりたい仕事は何かを自問した結果、なんとなく「海外でダイナミックな仕事をしたいなぁ」と思い、今の職場に転職した。

転職にあたって不安がなかったと言えば嘘になるが、根拠のない自信と生来の能天気さで「何とかなるか」と思っていたので、特に躊躇いはなかった。

最初の職場は年間売上2,000億円を超える大企業だったが、組織が大きすぎて自由がなく、収入は良かったものの組織の歯車に甘んじている感覚があったし、次の職場は公的機関で将来の安定はあったものの、仕事にダイナミックさがなくてこのまま定年まで働いていてもいいのか?という疑問が常に付きまとっていた。

そんな中で、仕事は充実していてやり甲斐があり、自由に羽を広げて仕事をしたいという身勝手な欲求を満たすためには、海外で仕事をするのもアリかな、と思い、今の仕事に転職した。幸い留学経験があり英語には不自由がなかったし、バックパッカーをしていたのでどの国でも生活できる自身はあった。そして海外で仕事をする場合、高い収入を得られるケースも多いので、身も心も豊かにそして自由に生活できるのではないか、と考えて海外で仕事をすることを選んだのだ。よく考えれば、至極自分勝手である。

海外で仕事をする方法

海外での仕事にはいくつかの職種がある。多くの人がイメージするのは、日本の大企業に勤めて世界を飛び回るビジネスマンだったり、国際機関やNPOに所属して途上国の開発支援を行う国際協力などの職種ではないだろうか。これらは海外を舞台にした仕事の一部でしかない。現実的に仕事を得られる可能性の高い職種を、ここでいくつか紹介したいと思う。

1. 日本の民間企業に勤務し、海外出張・海外駐在する

海外で仕事をしている日本人のうち、これが最も一般的なパターンであろう。外国と取引のある企業は、必ず現地への出張や支店・営業所での駐在員がおり、また取引先との営業や折衝、工場建設など、仕事の種類によってはかなりの頻度で海外出張がある。ただし、海外事業を扱う企業では、日本国内での事業も手掛けているケースがほとんどであるため、その企業に就職しても必ず海外事業の担当になるかは分からない。また、人事異動が定期的にあり、一定の期間 (多いのは3~4年ごと) で所属部署が変わるケースも多く、長く海外事業に携われる保証がない。

企業の中で海外事業を担当する部署に配属されるためには、資格や適性を審査されることが多く、高い英語能力や海外生活経験だけでなく、国内事業等での業務実績なども考慮されるため、元々のポテンシャルの高い人が優先的に配置される。

大手企業は海外での事業の幅も広いが、激しい就職競争を経て入社しても、社内でまた選抜試験のための競争を続けなければならない。また、給与は総じて高水準で、海外業務での手当や待遇もいいが、相当の素質が要求されると共にそのポテンシャル維持のための努力を続けられる人でないと辛いかもしれない。

狙い目は海外事業を長く続けている中小企業や専門商社で、組織が大きくない分社内の競争も緩やかで、異動も少ないケースが多い。

2. 日本の国際援助機関に勤務し、海外事務所に派遣される

代表的な組織にはJICA (国際協力機構) がある。日本で唯一の公的国際援助機関で、日本のODA (政府開発援助) を一手に手掛ける大本山。かつて円借款を担当していた JBIC (国際協力銀行) と合併し、無償資金協力だけではなく円借款事業も担当するようになった。組織は独立行政法人になったが、準公務員的な立場であることには変わりなく、国家公務員試験並みの競争を経たエリートが採用される。

業務として途上国での開発援助を行っているが、実際には現地で事業を行うゼネコンやコンサルタントの調達業務や、事業採択までの政府間交渉などが中心で、担当が海外事業でも日本国内で監督する職員が多く、東京の本部に勤務する人が過半である。組織内の人事異動や試験を経て海外の事務所勤務となると、3~4年程度の途上国の事務所に駐在となり、その国で実施されているプロジェクトの監督指導や、新規案件の発掘、相手国政府担当者との折衝などを担当する。基本的にデスクワーク。

3. 日本の開発コンサルタント、ゼネコンなどに勤務する

上記2のJICAでも紹介した日本のODA事業だが、実際に現地の現場 (フィールド) で仕事をしているのは、調査や設計を行うコンサルタントと、建設事業を手掛けるゼネコンである。JICAの職員がそこで仕事をしているわけではないので注意が必要だ。

コンサルタントというと、経営コンサルや財務コンサルなどがイメージされるが、ODA事業では、相手国の要望や予算を基に必要な施設の計画・調査・設計を行う「建設コンサルタント」という業種が存在する。要望を具体化するためのコンサルテーションがその業務の中心で、専門の技術者集団により建設プロジェクトを形作る仕事だ。

コンサルタントによって仕上げられた計画や設計を基に施設の建設を行うのはゼネコンの仕事である。最近は施設やインフラなどのハード系のハコ物だけではなく、人材育成や都市計画、経済開発を支援するコンサルタントや研究機関もある。

プロジェクトによるが、ODA事業は1つの案件で長い物だと10年単位の仕事になるので、現地に長期駐在するコンサルタント、ゼネコン社員も多い。採用に当たっては英語力よりも技術力が中心的に評価され、プロジェクトへの配属も技術的な経験や資格で選定されることが多い。

4. 日本の国際協力NGO/NPOに所属する

日本国内には多数、国際協力事業を行うNGONPOが存在する。事業が開発支援や社会福祉の分野になるため、コンサルタントやゼネコンが手掛けるハード系事業ではなく、教育や貧困改善、環境問題など、ソフト系の支援分野が多い。

採用枠が元々少なく、一般的な民間企業に比べると門戸は狭いが、就職試験やポテンシャルの評価は緩いケースが多い。ただし総じて給与は安く福利厚生も不十分で、数年勤務しても民間企業の初任給並みのまま昇給がなかったり、海外勤務でも手当が少なかったりする。収入を得るためというよりは、社会的に意義のある活動に取り組みたい人に向いている仕事だ。

5. 外資系企業の日本法人に勤務する

外資系企業が設ける日本法人に勤務することで、法人の本社との行き来が発生するので、海外出張の機会が多いという人もいる。元々日本に法人を設けていることから、既にグローバル企業であり、他国にも同様の法人を構えているケースも多いので、社内の出張だけでも様々な国に行くことができるケースも多い。

ただし、日本法人が日本だけをマーケットエリアとしている場合、仕事の中身は国際的でも業務場所は日本が中心になるので、日本企業よりも海外での仕事は少ないケースも。

入社のためには、法人の本部がある国の言語において、相当のスキルが必要である。英語であればTOEIC 860点以上、国連英検1級程度の言語レベル習得が必須で、第2外国語のスキルが求められることも多い。入社後は、日本の民間企業よりも高い給与が得られることが多いが、日本法人が撤退する可能性もあることから、安定性には欠ける。

6. 海外の国際NGO/NPOに所属する

上記4のNGO/NPOと同様だが、海外に本部のある組織に所属する方法である。有名なところでは「国境なき医師団」「国際赤十字」などが該当するが、上記5の外資系企業並みの言語スキルが求められる。また、日本のNGO/NPOよりも、より危険・過酷な現場に派遣される可能性もある。

採用は随時募集のケースが多く、プロジェクトや事業ごとに求められる人材や職種が異なる。国境なき医師団でも医師だけではなく工事関係の技術者や調達管理の事務方など、募集職種は多岐にわたる。待遇面では日本のNGO/NPOより報酬が高く、手当や安全管理面でも充実しているケースが多いが、プロジェクトが終了すると雇用解除になることもあり、長く続けられる仕事かというと疑問が残る。

7. 国際機関に勤務する

国際機関の代表格は国連だが、国連本部職員の採用はほとんどなく、国連内の機関ごとに採用が行われており、その枠を見つけて応募することになる。新卒での採用は絶望的で、数年の社会人経験や、その分野での実績が求められる。当然言語スキルは国連英検1級が必須である。日本に本部のある国連大学や、世界銀行東京事務所などが定期的に専門職員の募集をしているほか、研修コースに参加するインターンや奨学生 (報酬がもらえる) の募集もある。業務としては、国連機関が実施するプロジェクトのフィールド業務に参加できることが多い他、専門分野スキルアップのための授業などもある。

将来に渡りその機関に勤めるというよりも、社会人経験を踏まえてその専門性や経験を高めるために募集する人が多い印象である。数年の勤務や修習の後、さらに待遇の良い企業に転職するためのステップアップとして利用されており、様々な国から派遣される優秀な人材との交流ができるなど、個人的なキャリア形成の手段として有用だ。

8. 外国企業に勤務する

ある特定の国が気に入ったら、その国の企業に就職してしまうという手もある。これまではどこかにベースがあり、プロジェクトや案件ごとに海外へ出向いて仕事をする例がほとんどであったが、外国企業に就職してその国に定住し、場合によって永住してしまうという方法もある。

採用方法は国によって大きく異なり、これから日本国内のマーケットや日本人観光客をターゲットに業務を広げていきたい企業では日本人を積極的に採用しているケースもあるし、ただ外国人枠というような形で日本人に限らず様々な国籍の人を等しく募集している企業もある。

注意すべきは、基本的に労働条件はその国の法律によって定められるため、待遇や福利厚生で日本と条件が大きく異なるケースかあることだ。また、その国に長期滞在して就労する場合、就労ビザ、労働許可の取得や、納税義務など、様々なルールが存在するため、十分に理解した上で手続きを進める必要がある。よく知らないままに勢いで就職してしまうと、不法滞在、不法就労として逮捕や国外退去処分とされることも少なくない。

その国に留学したり、日本企業に就職してその国に派遣されたりして、十分に経験を得てから決断しても遅くないだろう。現地の法律やルールが理解できるだけの現地言語の習得が絶対条件である。

9. 日本/外国の企業・公的機関の現地採用枠に応募する

これは案外見落としがちな穴場的な方法である。

例えば日本大使館では、定期的に現地採用の専門員を募集している。現地事情に精通している、現地語が話せる、現地滞在経験があることなどが条件にはなるが、国家公務員試験を経た外務省職員でなくても大使館員になることが可能だ。

同様に、JICAの現地事務所や、NPO/NGOの事務所でも現地採用しているケースがあり、特に現地の法務や税務、人事管理などにおいては、現地のことを知っている人が必要であり、日本語でコミュニケーションが取れることがメリットになる。現地語に精通していれば通訳・翻訳としての業務もある。

また、日本企業の現地支店や営業所でも、同じような条件で日本人の募集をしているケースがある。特にその国に新規設置した事務所になどでは、現地の事情をよく知る日本人は重宝される。待遇面では現地の物価事情に合わせた報酬となるケースが多く、途上国では日本より低い収入に抑えられているが、現地企業に比べると数倍高い報酬が得られ、現地で生活するには十分な収入が得られるケースも多い。

海外で働くための素質

これまで、海外で働くための方法を紹介してきたが、ではどんな人が海外で働くのに向いているのだろうか。

ただ「海外で働きたい」という意欲だけでは、なかなかその夢は実現できない。「英語が話せる」というだけでも物足りない。やはり「海外で生活できる」という確実な基礎がないと、どれだけ勉強ができて語学のスキルがあっても、海外で仕事をしていくのは難しい。海外で仕事をする場合、まず直面するのは、現地の人々とのコミュニケーションである。コミュニケーションとは言っても、相手と意思疎通を行うために必要なのは言語だけではなく、相手の国の分野や習慣を理解することが必要だ。相手を理解するというプロセスは、仕事だけではなく、職場の外の普段の生活でも必ず生じるため、その国、その場所で心地よく、トラブルなく生活できるためのスキルが必要である。どれだけ仕事上のスキルがあっても、その場所で生活できなければストレスが溜まる一方であり、廻りに敵をつくることにもなりかねないのだ。

昔に比べると日本でもだいぶ薄れてきたが、帰国子女や外国で長く生活した「ネイティブかぶれ」の人たちに対する拒否感があるだろう。例えば日本の文化やルールを理解していない、敬語が話せない、上から目線で日本をバカにする、いかに海外が素晴らしいか講釈を垂れる。そういう人の姿を簡単にイメージできるだろう。これをあなたではなく相手基準で見てみると、ネイティブかぶれの相手に不快感を抱くあなたが「現地の人」で、日本を見下すような態度を取る相手が「海外で働く人」、そして日本という場所が「現地」となる。これを海外であなたが働く場面に置き換えると、あなたの態度一つで現地の人とどうコミュニケーションを取り、生活していくかのイメージか沸くのではないだろうか。

海外で仕事をするための素質の基本は、いかにその国で違和感なく生活ができるか、である。別に現地人化する必要は一切ない。あくまでも日本人は現地では外国人であり、現地順応をするにも限界はある。しかしいかに相手とのトラブルを避け、相手に不快感や嫌悪感を持たせず、双方が気持ちよく生活できるかは、海外で仕事をする上で重要なポイントなのである。

その基礎があってはじめて充実した仕事ができるわけで、元々持っているスキルや専門経験が生きてくるのである。言語スキルが高い、専門的な知識や経験が豊富、というのは、個人の資質のあくまでも一部分でしかなく、それが海外で仕事をする上で有効かどうかは判断が難しい。

そのため、これから海外で働きたいと考えている人は、まずは短くとも3か月ほどは海外で生活をしてみて、自分が海外で生活をする上で生じた不安や不足点を予め理解しておく必要がある。その点で、自分の足とコミュニケーション能力が頼りとなるバックパッカーや、3か月以上の留学経験がある人は有利だと言える。残念ながら1か月程度の短期留学の経験は、海外旅行の延長程度でしかないので、経験やスキルと言えるほどの代物ではないので、注意した方がいい。

海外で働くために経験しておくべき10箇条

これから海外で働きたい、という人に是非とも経験しておいてほしいポイントを10個まとめた。これは絶対条件ではないが、参考にしてほしい。

  1. 言語能力の高さは必須ではないが、少なくとも自分の意思が伝わる程度の会話レベルのスキルは必要。
  2. まずはその国の文化や歴史をよく理解し、生活する上でのタブーを知る (どの国にも相手を不快にさせる行動や禁忌事項がある)。
  3. 正しい日本語を身に着け、基礎的な日本の社会、文化、歴史を理解し、相手に説明できるようになる (外国では必ず日本のことを質問されるので、適切な回答ができるとコミュニケーションにおいて有利)。
  4. 連続して3か月以上、外国 (できれば途上国) での生活を経験する。
  5. 不便な環境を受け入れる余裕を持つ (場合によっては不衛生、不快な環境に身を置くこともある)。
  6. 欲しい物が手に入らなくても我慢できる、或いは何か代用できるもので工夫できるスキルを持つ (日本ほど便利な国は少ない)。
  7. 身の回りのことを自分一人でできるようになる (基本的な炊事・洗濯・掃除など)。
  8. 相手が求めるものに対して適切な回答を適切なタイミングで提供できるようにする。その場で即答ができない場合、持ち帰って後日回答することを躊躇わずに提案できる意思の強さを持つ (これは言語能力に不安がある場合でも有用)。
  9. どんな相手に対しても、自分の意思や考えを説明し、理解されるまで根気強くコミュニケーションを維持する我慢強さを持つ (相手を説得できなければ仕事は成立しない)。
  10. 会社や仕事で必要な情報を網羅的に把握し、自身の専門分野おいて十分な知識を持ち、誰よりも詳しいものを1つは持つ (海外にいる限り、あなたは会社の代表者であり、相手よりも持っている情報がすくなければわざわざ日本人と仕事をする意味はないと思われる)。

最後に

残念ながら、最近は若者の草食化が進んでいるようで、昔に比べて海外志向の若い人が少なくなってきている。当然、海外で仕事をするには様々なリスクがあり、日本で仕事をしていた方が安全で安定していることは間違いない。しかし、海外で仕事をするにはそれなりのメリットもあり、日本国内にいるよりも自由でダイナミックが仕事ができるケースも多い。しかし、海外での業務需要はそれほど衰えておらず、海外で働いてくれる若い世代が求められていることは間違いない。

今、海外志向の若者が減っているということは、それだけ募集者の母数が少ないということであり、競争環境が緩和してきているということだ。もし海外で働きたいと考えているひとがいれば、躊躇わずに飛び込んできてほしい。

上に挙げた10箇条は、今からできることもあれば、簡単に実現できないこともある。しかし、1つずつミッションをクリアしていけば、きっと真のグローバルパーソンになれるはずだ。

世界に飛び出す若い世代を、私は全力で応援する。