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労働奇譚 第2話 「5月病を克服せよ」

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今日は「令和」始まりの日。新しい時代を迎えた。

新しい時代を迎えたとはいえ、世の中は空前絶後の10連休ゴールデンウィークの真っ最中であり、多くの人が新時代の到来という歴史的事象それ自体よりも、またとない超大型連休を楽しんでおられることだろう。

今日は10連休が始まって5日目で、やっと折り返しである。そう考えるとやはり10連休は長い。

 

 

連休後の恐怖

長いゴールデンウィークが終わった後に来る恐怖は、やはり「五月病」である。

五月病は、入社、入学、異動などによって4月に起きる環境変化からしばらくが経過し、期待や緊張が緩んだ時に生じる精神的な不安定状態のことで、4月中は何とか持ち堪えて連休に突入しても、ゴールデンウィーク後に再度不安症状が発症することが多いことから五月病と言われるらしい。五月病は最早多くの人が知る名称だが、医学的には「うつ病」「適応障害」と呼ばれる精神疾患の一部である。

4月に始まった全く違う環境での慣れない生活が一旦連休によって中断され、精神的に解放された反動で、連休後の復帰が一層億劫になる。この目まぐるしい環境変化が五月病の原因である。

実は五月病は新人以外にも発症する

五月病は環境変化に慣れていない新人に発症することが多いと言われているが、実は新人ではない人にも良く見られる。

例えば会社であれば上司や先輩で、すでにその環境にしばらく身を置き環境に慣れている人にとっても連休明けの仕事はたいそう鬱陶しいものであるが、職場環境に慣れているせいで、油断して連休を謳歌しすぎたり、家族サービスで会社での仕事以上に疲れやストレスが溜まり、連休の前後での精神的な降り幅が一層大きくなって精神が参ってしまう、という人も時々見かける。

また、新人を監督する立場の上司や先輩社員にとっては、「新人が五月病になるのではないか」という不安も、自らの精神状態を不安定にさせる要素になる。

五月病は新人以外にも発症しうる、国民病的な存在なのだ。ただし、五月病の原因にはこうした環境の変化だけでなく、イジメや暴力、陰湿な嫌がらせなど、直接的に精神や身体に危険を及ぼすものもあるが、これは五月病ではなく犯罪行為なので、即座に警察に相談するか労基に駆け込むなど、別のアプローチが必要である。

五月病になりやすい人

五月病になるかどうかは、置かれている環境や周囲のサポート、人間関係、本人の精神的な耐性などによるので、一概にこうしたら五月病を回避できる、という有効策はない。

元々五月病の発症が予想される場合は、早めに精神科医にかかり、精神安定を得られる薬の処方を受けておくのも一つの手であるが、多くの人は、実際に連休が明けてみないと、自身の精神にどれだけ負担が掛かるのかは分からないだろう。

ネット上では、新しい環境に移る前の友人と時間を共にするのが良い (帰れる場所を維持しておく)、などと書かれているが、経験則から言ってこれはあまり意味がない。それは何故か。

端的に言うと、今いる環境とは別のコミュニティで良好な関係を維持できている人は、そもそも五月病になり難いからだ。慣れ親しんだ環境や関係は、新しい環境におけるストレスの吐き出し口として機能するので、こうした繋がりを持っている人はストレスのコントロールがしやすく、五月病になるほど追い詰められるリスクが低い。

一方で、五月病になり易い人は、こうしたストレスの吐き出し場所がなく、自身の中に留めてしまう傾向があり、忍耐の限界に到達するとストレスが爆発して精神の安定を失い、五月病になってしまう。もちろんその限界値は人によって違う。

結局、ストレスが溜まりにくい精神構造の人は五月病になりにくく、今の時点でも自身が「五月病に罹るかもしれない」という不安は小さい。一方、「五月病に罹ったらどうしよう」と不安を抱えている人ほど、実際に五月病になりやすい。

今「五月病に罹ったら嫌だな」と思っている人、いや、五月病」というキーワードでネット検索をしてこのブログに行き当たったあなたは、精神の根底部分に五月病を発症するリスクを抱えている可能性がある (そもそも五月病の心配をしていない人は、五月病というキーワードをネットで検索していない)。

五月病を克服するには

五月病を克服す方法は、大きく分けて3種類ある。

  • 1つ目は、五月病に罹りそうな不安をうまくコントロールすること。
  • 2つ目は、専門医療機関で医学的な対処をしてもらうこと。
  • 3つ目は、五月病の原因となるストレスを回避すること。

ちなみに、上記の項目は上から順にストレスの過酷さが増すと考えてよい。

1つ目の「不安をコントロールする」ということは簡単ではないが、例えば多少は環境変化の不安やストレスに対する我慢ができれば、1週間、2週間とその環境に身を置き続けることで、環境に慣れて不安が解消されるか、目の前の日常に忙殺されて不安を忘れるようになる。普段の生活の中でも「嫌だな」と思うのは最初だけで、しばらく経てばすっかり不安やストレスを忘れてしまう (慣れてしまう)、ということはあるだろう。朝は学校や会社に行きたくないと思っても、登校・出勤してしまえば普通に振舞える人はこういうタイプだ。

2つ目の「専門医療機関で対処してもらう」は、五月病うつ病や適用障害といった精神疾患の一種らしいので、精神科医に相談して適切な薬を処方してもらうことで症状が緩和される。薬を処方してもらうという行為によって安心を得る、ということもできるし、医師から診断書を発行してもらえば、学校や会社にも一時的に休む理由を説明しやすくなる。しかし、五月病は5月だから発生するわけではなく、本人がその環境にいてストレスを感じていることが原因なので、根本的な原因が除去されなければ症状が落ち着いて再び登校・出社しても、再び精神不安に陥る恐れがある。

3つ目は、自分での精神コントロール医療機関の診断があっても克服できない環境にいる場合、学校を休む、会社を休職・退職するなど、そもそものストレスの原因を遠ざける方法だ。医療機関での診断や薬の処方でも完全に五月病の根を断つことは難しく一時的な症状の緩和にしかならないので、学校や職場などにストレスを発生させる原因があるのであれば、それに慣れるか、環境を変えるしかない。

五月病とは一体何なのか

社会で生活をしていれば、多かれ少なかれ何かしらのストレスはあるし、それを完全に除去することはできない。学校や職場でも、ストレスの原因になるイジメやハラスメントの除去のための対策を講じているケースは多いが、結局万人に受け入れられる解決法というのは非常に難しい。

そして、多くの人は、少なからず「学校に行きたくない」「会社に行きたくない」と思っているので、言い換えれば、ほとんどの人は「五月病予備軍」である。通勤通学のための満員電車がストレスだと思っても、それを解消することは自分1人の力では無理だ。どこかで折り合いをつけながら自己防衛策を講じるしかないが、変えられない事象に対して文句を言ってもあまり意味がない。それに耐えられないのであれば違う環境を探す (満員電車で通勤通学しなくてもよい方法を探す、など) しかない。

そして医療機関に行けば、このような症状は「五月病」ではなく「精神疾患」として診断され、自分が「精神疾患を抱えている」という第三者からの太鼓判を貰うことになり、より一層自分を精神的に追い込んでしまうかもしれない。医師から「あなたは精神病です」と言われるショックは如何ほどだろう。

 

五月病を患う張本人にとっては深刻な問題だが、「五月病」というだけあって、5月を過ぎて環境に慣れると、案外精神的な状況は改善するケースも多い。自分が潰れるまで我慢しろ、などとは決して言えないが、連休明けは誰もが辛いと考える時期なので、あなただけに起きている問題ではないかもしれない。しばらくその環境で生活してみるのがいいのではないだろうか。

ただ、1か月を経過しても一向に改善しないという場合は、我慢し続けても状況は好転しない可能性が高いので、医療機関の受診や休学・休職というのも1つの対応策として検討してみてもいいかもしれない。

もう一度言うが、連休明けは誰もが五月病予備軍だということを忘れないでほしい。

ゴールデンウィークは楽しもう

ストレスのコントロール方法の肝は、気持ちにメリハリをつけることである。

家に帰っても学校や仕事のことを考えていれば、ずっとそのストレスに付きまとわれることになる。会社から出たら仕事のことは忘れて、友人と飲んだり家族と過ごしたりするなど、生活を切り替えることでメリハリをつけてストレスをコントロールする、というのが有効だ。

「連休が終わればあの地獄の日々が待っている・・・」

今、何となく気持ちが晴れない人、五月病の不安を抱えている人、あと5日も休みがあるのに連休後のことばかり考えてしまっている人は、できれば今は連休後のことは考えず、とりあえず今は新時代の到来と、この10連休を楽しんでほしい。

今、連休後のことを考えれば幾分か不安が解消する、ストレスの原因が小さくなるというのなら、それはそれで結構だが、多くの場合そうはならない。

考えるだけ無駄なので、今日この日を楽しむことに力を注ぐべきだ。