AS I WANT

様々なことを "As I Want" (私の好きなように) 考えるブログ。

ストップオーバー

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今日はバンコクから。

新時代・令和への改元に伴う祝日により、前代未聞、空前絶後の10連休が始まった。これまでのゴールデンウィークでは、どのような曜日の並びでも前後に連休が分割されてしまうので、間を埋める有給休暇を取得しなければ、これほどの大型連休は実現しなかった。少なくない労働者が、カレンダー上は有給休暇を消化することなく10日間も休暇を享受できるのは、今年が最初で最後ではないかと思う。

かくいう私も、すでに連休は始まっているが、少し遅れての休暇を得るため、明日日本に帰国する。

 

昨日は商用のためシンガポールからバンコクに飛んできたが、今日は学生時代の後輩に会うため、バンコクから香港に飛ぶ。明日は香港からの帰国である。

ゴールデンウィークの影響でフライトが混雑しており、幸か不幸か、バンコクからの直行便の予約が確保できなかったために香港経由便を購入し、その結果、後輩と香港で飲茶を食べられることになった。

この後の予定がしばらくの休暇だから、気兼ねなく香港滞在を満喫できる。仕事の予定が立て込んでいたら、経由地で1泊などせずその日のうちに乗り継いで仕事先に向かわなければならない。日程に余裕があれば仕事先でゆっくりすることができるが、経由地でのんびりして、その後のフライトがトラブルなどで目的地到着が遅れてしまっては元も子もない。だから、たまのこうしたストップオーバー*1は楽しい。

 

ストップオーバーは、仕事ではなかなか目的地になりにくい街を楽しむいい機会だ。観光でならば行く機会があるかもしれないが、まずこの街、この国での仕事はないな、と言う場所があり、そこはただの通過点でしかない。初めて乗り継ぎのために利用する空港では、日程が許す限り、必ずストップオーバーしている。

出発地と目的地を真っ直ぐ繋ぐ直行便の旅は、最も効率がよく、目的地での滞在時間を最大限活用できる。しかし、それでは何処となく物足りない。

最終目的地に到達する前に少しクッションを置くことで、期待を高め、心のボルテージを上げていくこともできる。一足飛びにゴールに乗り込むのではなく、一歩ずつ足場を固めていくイメージだ。謂わば、助走区間

目的地を去り帰国する場面では、そこであった出来事の想い出に浸り、帰国後に待っている現実へと戻る前の最後の悪あがきとしてのグラデーション。

仕事の場合では、これから迎える厳しいビジネスの戦場に乗り込む前の最後のウォームアップタイム。或いは、戦いが終わり家路につく前にこびり付いたストレスを洗い流すリフレッシュタイム。

こう考えると、ストップオーバーは確かに非効率だが、それはそれで楽しみ方があるのだ。

 

今日から始まった一世一代のゴールデンウィーク。これはまさに平成から令和へ向けた旅の途中のストップオーバーだ。

時代が昭和から平成に改められた1989年には、時代の過渡期を楽しむ余裕はなく、誰もが突然昭和から放り出されて、直ちに平成を始めなければならなかった。

だが、今回の平成から令和への改元では、天皇陛下のご意向により自ら退位されることになったから、昭和天皇崩御したときのような悲しさがない。喪に服する必要もなければ、騒いでも不謹慎だと言われない。今生きているすべての国民が経験したことのない、明るい改元

去る4月1日の新年号発表から、日本中がお祭り騒ぎである。

老いも若きも、男も女も、誰もが新元号「令和」の発表を待ち望み、そして受け入れた。国の歴史や風習に無関心な若者までが、4月1日午前11時30分にはテレビやスマホに噛り付き、菅官房長官の発表に注目する。発表直後の号外新聞を奪い合う。こんな事が起きるとは、誰が予想しただろうか。

これまで30年余りの平成の時代を振り返り、「平成はこんな時代だったな」と懐古し、「来たる令和の新しい時代はこうなってほしい」という期待感が溢れている。

それと共に、どんな時代になるか分からない若干の不安を抱えながら、人々は5月1日からの新しい令和の時代を待っている。

そう。今我々は、来たる令和元年の到来に向けて、このゴールデンウィークで時代と時代の狭間のストップオーバーを楽しんでいるのだ。

 

令和元年初日となる5月1日、あるいは最初の平日となる5月7日、人々と何と挨拶しようかと考えているのではないだろうか。

「明けましておめでとう?」「新元号もよろしく?」

こんなちょっと下らない笑える悩みを抱えながら、紛争でもなく、クーデターでもなく、暴力を全く用いることなく移ろうように時代が変わる。こんな平和で柔らかい国が、世界のどこにあるのだろうか。こんな日本は世界からは非常に奇異に見えるが、その奇天烈さは、他国の人々には理解ができない不思議な美しさの所以だ。

 

平成は残すところあと3日。

新時代の到来までもう少しの間、ストップオーバーを楽しもう。ただし、乗り継ぎ先の便に乗り遅れるとノーショウ*2扱いになって少々面倒なことになるので、ご注意を。


*1:ストップオーバー...フライト乗り継ぎのための経由地で24時間以上滞在すること

*2:ノーショウ...予約していた便に、事前連絡なく搭乗しないこと。運賃種別によってはノーショー・チャージというペナルティが請求されたり、チケットが無効になる場合がある